omicro Flux:バランス制御球体型ロボット

1. はじめに

omicro Fluxは、従来のomicroの後継機として開発されたバランス制御球体型ロボットである。名前の”Flux”は、磁束のほか、センサデータや状態の変化・流動といった連続的な動きを表現している。最大の特徴は、従来のDCモーターからM5Stack製BLDC Roller485に変更することで、大幅な精度向上を実現したことである。

BLDCモーター、IMU、自作制御基板による構成で、球体内でバランスを取りながら移動する仕組みとなっており、XRプロジェクト「Boundary Blur」のような高度なインタラクション体験の実現を可能としている。

omicro Flux Image 1

2. 開発背景

omicro Fluxの開発には背景がある。これまで「omicro」という球型ロボットを「Boundary Blur」というXRプロジェクトで動かしていた。Boundary Blurは、物理世界とデジタル世界の境界を曖昧にするというコンセプトのプロジェクトで、omicroはその重要な構成要素であった。しかし、イベントを重ねるごとにomicroの回転量制御の精度の低さ、耐久性の低さ、トルク不足を痛感するようになった。XRアプリでのインタラクションを高精度化するにあたり、これらの問題が解決されないと、Boundary Blurでより高いインタラクション体験を実装することは困難だと判断し、omicroの後継機として開発されたのがomicro Fluxである。

3. システム構成

システムの利用手順は以下の通りである。

  1. 床に球体型ロボットを設置する。
  2. 球体型ロボットの電源を入れ、iOSアプリケーションとBLEで接続する。
  3. 球体型ロボットで電子コンパスのキャリブレーションを行う。キャリブレーションはiOSアプリから行われる。
  4. iOSやwatchOSアプリケーションで球体型ロボットを操作する。

3.1 球体型ロボット

omicro Fluxは、従来のomicroと同様に外側の球体とその中で動くロボットの二部分から構成されているが、内部システムに大幅な改良が加えられている。

外側の球体

外側の球体は、直径170mmのクリアなプラスチックを使用しており、材質はスチロール樹脂である。表面には硬化ガラスコーティング剤が塗装されており、耐久性と視認性を高めている。この点は従来のomicroと同様の構造である。

内部のロボット

omicro Fluxの最大の特徴は、制御システムの大幅な変更である。従来のDCモーターからM5Stack製BLDC Roller485に切り替えることで、精密な制御が可能となった。

Roller485は、BLDCモーターだけでなく、角度センサーやディスプレイなどが一体化された統合型ブラシレスDCモーターモーションコントロールキットである。主要な仕様は以下の通りである:

この一体型デザインにより、従来のシステムで必要だった複数の部品を統合し、配線の簡素化と制御精度の向上を実現している。制御基板は自作のものを使用し、IMU(慣性計測装置)と組み合わせることで、球体内でのバランス制御を実現している。

自作基板のIMUには3軸ジャイロスコープと3軸加速度センサーが内蔵されており、ロボットの姿勢や動きを高精度で検出する。さらに、地磁気センサーを搭載することで、絶対的な方位角の取得が可能となり、より正確な方向制御を実現している。

車輪と運動機構

omicro Fluxには合計10個の車輪があり、動力は下部の大きな2つの車輪にのみ繋がれている。ゴムタイヤと球体が直接接触するとグリップが強すぎるため、医療用のサージカルテープを使用して摩擦を調整している。その他の8つの車輪は、静止時には球体の内壁に接触していないが、走行時には内壁に触れるようになっている。これにより、「ボールの直進安定性向上」、「衝撃吸収」、「回転時の軸保持」という役割を果たしている。車輪が回転すると、内部のロボットが球体の内側の壁を駆け上がることで、ボールが前進する。ボールの方向変更は、車輪が逆方向に等速で回転することで、超信地旋回を行い、その場での回転が可能である。

3.2 操作アプリケーション

omicro Fluxの操作には専用のiOSアプリケーションとwatchOSアプリケーションを使用します。これらのアプリケーションの詳細な機能や操作方法については、「omicroシリーズ専用アプリケーション」をご参照ください。

omicro Flux対応版の主な改良点:

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